感染管理情報
洗浄・消毒後の消化器内視鏡の扱いについて
- Q 洗浄、消毒後の消化器内視鏡取扱いについて教えてください。
洗浄、消毒後の消化器内視鏡を触る際は、手洗い後、アルコール消毒してから取り扱うのと、未滅菌の手袋を着用して扱うのではどちらが良いのでしょうか。
明記されているガイドラインなどは見つけられませんでした。より良い方法を教えてください。 - A
消化器内視鏡の感染管理については、2013年に日本環境感染学会、日本消化器内視鏡学会、日本消化器内視鏡技師会の三学会より公開された「消化器内視鏡の感染制御に関するマルチソサエティ実践ガイド 改訂版」があります。
また、気管支内視鏡については2013年に日本呼吸器内視鏡学会より公開された手引書として「呼吸器内視鏡診療を安全に行うために」がありますが、いずれも消毒後の内視鏡を触れる際の手の管理について明確な記載はありません。
未滅菌手袋の着用とアルコール手指消毒の比較については、矢野邦夫先生がこのASP感染管理のQ&Aで「注射準備の際の未滅菌グローブ着用について」で以下のように解説されています。
米国医療薬剤師協会(ASHP: American Society of health system pharmacists)が2000年に公開した「薬局調整の滅菌製剤のための質保障のためのASHPガイドラインがあります。このガイドラインのなかで、「清潔を保つ意味でのグローブ使用」について言及している部分を抜き出しますと「例え、滅菌グローブが使用されたとしても、無菌的に調合するときの滅菌を保つことはできない。しかし、手指消毒した手から剥がれ落ちてくる細菌、皮膚、そのほかの物質を封じ込めることには有効である」と記載されています。すなわち、消毒した素手よりグローブの方が清潔なのです。
以上のことから、未滅菌手袋の着用とアルコール手指消毒とでは未滅菌手袋の方が清潔といえますが、未滅菌手袋を使用するときは以下項目を管理することが必要です1),2)。
- ノンパウダー製を使用する
- 手袋の箱は清潔な所に保管する
- 手袋を着用する前に手指衛生を行う
- 手袋を箱から取り出すときは箱や他の周
- 環境に注意して手袋をつまみだす
- 清潔な手袋の指先や手のひら部分には触れないように手袋の端(手首付近)を持つ
- 手袋を着用した際は破損がないか確認する
- 不潔になった手袋(洗浄に使用した手袋など)で消毒後の清潔な内視鏡を触れない
- 手袋に破損やピンホールを認めたら交換する
消毒後の内視鏡を取り扱うときに、未滅菌手袋を着用するのかアルコール手指消毒した素手で行うのかについて、施設内で検討して対応することが必要と思います。
- 洪愛子編集:感染対策の必須テクニック117、個人用防護具1手袋、インフェクションコントロール2010秋季増刊、メディカ出版、2010、20-22.
- 島崎豊:かんたんマスター感染対策、昭林社、2008、12-15.
この質問にご回答いただいたのは
島崎 豊 先生
愛知県厚生連海南病院 医療安全管理部 感染対策室 感染管理責任者 看護師長
1977年大雄会一宮看護専門学校卒業、大雄会病院、知多市民病院、1990年より現職。日本看護協会感染管理、聖路加国際病院感染管理、国立国際医療センターエイズ看護、県立愛知病院結核感染予防などの研修を修了。1994年感染管理責任者。医療安全管理部、感染対策室を立ち上げ現在に至る。日本医療機器学会理事、日本環境感染学会評議員、職業感染制御研究会幹事、中部地区中材業務研究会会長、歯科感染予防研究会会長。