感染管理情報

感染管理Q&A

ワクチン接種が必要な抗体価について

Q 麻疹PA法を妊婦や他の患者に行っていますが、国立感染症研究所の意見を聞いて抗体価が64以下の患者をワクチン要接種者としてます。こちらに掲載してある基準(「職員ワクチン接種時の抗体検査について」ご回答)ではワクチン要接種者の抗体価は128以下とありますが、そこまで必要な根拠を教えてください。
また、EIA法の場合8.0または10.0以下の患者を要ワクチン接種者としている施設が多いですが、16.0以下とする根拠も教えていただきたいです。
A

どの程度の抗体価があれば、麻疹などの感染を防ぐことができるかを明確にしたデータはありません。抗体価の測定によって、感染の既往は確認できますが、防御抗体が十分であるかの確認はできません。そのため、担当医は「一つの検査法で得られた抗体価はあくまでも一つの目安とする」として判断するしかありません。従って、学会のガイドラインを参考にして、「ワクチン接種が必要な抗体価」を設定するしかないと思われます。

麻疹の抗体検査にはEIA法(enzyme immunoassay: 酵素免疫測定法)、PA法(particle agglutination: ゼラチン粒子凝集法) 、HI法(hemagglutination inhibition: 赤血球凝集抑制反応) 、NT法(neutralization test:中和法)などが用いられています。麻疹のHI法はワクチン世代の年長児や成人では感度不足となるため避けられています1)。NT法が基本となるのですが手技が煩雑のため、近年はPA法が代わって実施されています1)。ELISA法は免疫の有無は判定できますが感染予防可能な免疫の評価には適さないとされています1)。しかし、実際には利用されているのが現状です。

抗体価とワクチンの接種についての情報を提示しているガイドラインには、「造血細胞移植ガイドラインー予防接種」1) と「日本環境感染学会. 院内感染対策としてのワクチンガイドライン」2) があります。前者は患者に対して、後者は医療従事者に対しての抗体価が提示されています。一般に、医療従事者に対しては患者よりも厳しく抗体価が設定されます。というのは、医療従事者が発症すると、多くの患者に曝露させる可能性があるからです。

これらのガイドラインを参考にすると、患者についてはPA法では 128~256以上があれば、麻疹ワクチンの接種は必要なくなります1)。医療従事者では厳しくなり256以上となります2)。EIA法では患者は8以上1)、医療従事者は16以上2) ということになります。職員ワクチン接種と患者ワクチン接種では、参考にすべき抗体価が異なることに留意ください。

参考文献
  1. 造血細胞移植ガイドラインー予防接種
    http://www.jshct.com/guideline/pdf/2008yobousesshu.pdf
  2. 日本環境感染学会. 院内感染対策としてのワクチンガイドライン
    http://www.kankyokansen.org/other/vacguide.pdf

この質問にご回答いただいたのは

矢野邦夫先生

浜松医療センター 副院長 兼 感染症科長

1981年名古屋大学医学部卒業、名古屋掖済会病院、名古屋第二赤十字病院、名古屋大学病院を経て米国フレッドハッチンソン癌研究所留学。帰国後、浜松医療センター。同院在籍中、ワシントン州立大学感染症科にてエイズ臨床短期留学、米国エイズトレーニングセンター臨床研修終了。2008年より同院副院長。医学博士、ICD、感染症専門医、血液専門医、内科認定医、藤田保健衛生大学客員教授、浜松医科大学臨床教授。

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