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ASP感染管理のQ&A | ASP Japan合同会社

抗体検査とワクチン

ワクチン接種についてご相談します。医療従事者ですが、抗体検査をせずに直接ワクチンを接種するのは可能でしょうか?病院側としましては、抗体検査に費用がかかり、そのうえワクチン接種でも費用がかかるため一度で済ませないかと考えているようです。ご回答よろしくお願いします。
抗体検査をする場合は麻疹、風しん、ムンプス、水痘をする予定ですが、直接ワクチンを接種する場合は麻疹風疹だけにするのか全部かは決めておりません。

 

ご質問の内容について、最も参考になるのが、CDCの「医療従事者における感染制御のためのガイドライン」です(1)。このガイドラインから関連する情報を提示します。

医療従事者に接種すべきワクチンには麻疹、風しん、ムンプス、水痘ワクチンに加えて、HBVワクチン、インフルエンザワクチン、破傷風トキソイドがあります。これらのなかで、インフルエンザワクチンと破傷風トキソイドは抗体検査を実施せずに接種しています。HBVワクチンについては、新採用者や学生といった接種既往のない人々には抗体検査をせずに実施します。そして、HBVワクチンを1コース(0-1-6カ月の3回接種)のあとには抗体検査を実施し、HBs抗体価が10mIU/ml未満であれば、2コース目も実施します。

麻疹、風しん、ムンプス、水痘ワクチンについては、アウトブレイク時と平常時では対応が異なります。アウトブレイク時では抗体検査をして結果を待っている余裕がないので、アウトブレイクが発生している区域の人々には抗体検査を実施せずにワクチンを接種することを考慮します。特に、麻疹は感染力が強力なので、ウイルス伝播を防ぐために迅速なワクチン接種を行う必要があります。そのため、ワクチン接種前の抗体検査は不要です(2-5)

平常時には「抗体検査をおこなって、抗体の有無を確認してから接種するのか?」「抗体検査をせずにワクチンを接種してしまうのか?」についてコスト計算してから決定します。例えば、水痘については、抗体検査を実施したほうが経済効率として有利であるという報告があります(6,7)

実際、水痘や麻疹は医療従事者の多くが抗体を保持しています。そのような状況で、抗体検査を実施せずにワクチンを接種すれば、ワクチンの必要のない多くの人々に接種することになります。ワクチンの費用と抗体検査の費用を比較すると前者の方が格段に費用を要します。従って、アウトブレイクのみられない平常時では抗体検査を実施して抗体の有無を確認してから、ワクチンを接種するほうが経済的に有利になると思います。

参考文献
  1. CDC. Guideline for infection control in health care personnel
    http://www.cdc.gov/hicpac/pdf/InfectControl98.pdf
  2. Subbarao EK, et al. Prevaccination serologic screening for measles in health care workers. J Infect Dis 1991;163:876-78.
  3. Sellick J Jr, et al. Screening hospital employees for measles immunity is more cost effective than blind immunization. Ann Intern Med 1992;116:982-4.
  4. Grabowsky M, et al. Serologic screening, mass immunization, and implications for immunization programs. J Infect Dis 1991;164:1237-8.
  5. Stover BH, et al. Measles-mumps-rubella immunization of susceptible hospital employees during a community measles out-break: cost-effectiveness and protective efficacy. Infect Control Hosp Epidemiol 1994;15:18-21.
  6. CDC. Immunization of health-care workers: recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP) and the Hospital Infection Control Practices Advisory Committee (HICPAC). MMWR 1997;46(RR-18):1-42.
  7. CDC. Prevention of varicella: recommendations of the Advisory Committee on Immunizations Practices (ACIP). MMWR 1996;45(RR-11):1-36.

この質問に回答いただいたのは・・・

矢野邦夫先生

浜松医療センター 副院長 兼 感染症科長

1981年名古屋大学医学部卒業、名古屋掖済会病院、名古屋第二赤十字病院、名古屋大学病院を経て米国フレッドハッチンソン癌研究所留学。帰国後、浜松医療センター。同院在籍中、ワシントン州立大学感染症科にてエイズ臨床短期留学、米国エイズトレーニングセンター臨床研修終了。2008年より同院副院長。医学博士、ICD、感染症専門医、血液専門医、内科認定医、藤田保健衛生大学客員教授、浜松医科大学臨床教授。

聖路加国際病院 医療安全管理室 インフェクション・コントロール・プラクティショナー 坂本史衣先生