感染管理情報

感染管理Q&A

耐性菌に対する感染対策

Q 1.MRSAやESBL産生菌といった耐性菌に対する感染対策
2.マスク等感染性廃棄について
高齢者が多数入院されている病院(医療棟&介護療養棟)で感染委員をしています。2つ質問があります。

1.入院時、喀痰培養検査を必ずしますが、ESBLやMRSAなど多剤耐性菌を有する患者さんがたまにいます。状態が落ち着き、体力が回復した頃再検すると、陰性化することがあります。2週間以上おいて再検し、2回続けてマイナスの場合は感染解除としています。ただ、状態が悪い方は、なかなか陰性化しません。当院では、以前からの慣習で、これらの感染症を持ってる患者の喀痰(その他、尿など)検査を3ヶ月ごとに行っています。状態からみて、何度検査しても陰性化して無いだろうと思われる患者に対し、3ヶ月ごとなど頻回に検査する必要がありますか?主治医の判断に任せても良いと思うのですが・・・

2.インフルエンザなどの患者の診察やケアをする場合にマスクをしますが、そのマスクの廃棄物は、どこに捨てるのが本当なんでしょうか? 産業廃棄物・鋭利で無い感染性ごみなど感染防御の為のマスクであり、感染性ごみだと思うのですが、当院では産業廃棄物へ捨てるようになっています。
A

[質問1の回答]
MRSAやESBL産生菌といった耐性菌に対する感染対策には、CDCが2006年に公開した「医療環境における多剤耐性菌の管理」1)が有用です。このガイドラインの対象は急性期病院の特殊病棟(ICUやNICUなど)から長期療養型施設、さらに、外来や在宅ケアまで広範であり、多剤耐性菌についてはMRSAやバンコマイシン耐性腸球菌のみならず、その他のグラム陰性桿菌も含まれています。これらすべての医療環境および多剤耐性菌に対応できる単一の感染対策は存在しないことから、CDCは2段階の対応を推奨することによって、この問題を解決しました。第1段階はすべての医療施設において日常的な対策として実施しなければならない感染対策(標準予防策の遵守など)です。第2段階は、「日常の感染対策にもかかわらず、多剤耐性菌の発生率や罹患率が減少しない場合」「病院が疫学的に重要な多剤耐性菌(バンコマイシン耐性腸球菌、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌、多剤耐性緑膿菌など)を初めて経験した場合」「耐性菌によるアウトブレイクが医療施設や病棟内で確認された場合」に実施する感染対策です。
ご質問にある「2週間以上おいて再検し、2回続けてマイナスの場合は感染解除」というのは「積極的サーベイランス培養」と「サーベイランス培養の結果が陰性となるまでの接触予防策」といった厳しい対策であり、第2段階に位置付けられます。このような対策を日常的に経験しているMRSAやESBL産生菌について、臨床的に安定している患者に実施する必要はないと考えます。もちろん、多剤耐性緑膿菌、多剤耐性アシネトバクター、バンコマイシン耐性腸球菌といった病院がこれまで経験したことのない病原体であれば実施すべきと考えます。また、MRSAやESBL産生菌であっても、アウトブレイクが発生し、保菌者および発症者が感染源として疑われている状況であれば、やはり、実施してもよろしいかと思います。

[質問2の回答]
2012年、環境省が「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」1)を公開しているのでこれを参考にするのがよろしいかと思います。まず、「産業廃棄物」とは事業活動に伴って生ずる廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他令で定める廃棄物ということになっています。そして、「一般廃棄物」とは産業廃棄物以外の廃棄物のことです。従って、マスクは一般廃棄物として廃棄されることになります。ただし、血液で汚染しているマスクについては医師の判断によって感染性廃棄物として廃棄されることが多いと思います。廃棄物については地域によって異なるところがあるので、保健所にて確認することをお勧めします。

参考文献
  1. CDC. Management of multidrug-resistant organisms in healthcare settings, 2006. http://www.cdc.gov/hicpac/pdf/MDRO/MDROGuideline2006.pdf
  2. ② 環境省大臣官房 廃棄物・リサイクル対策部. 廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル. http://www.env.go.jp/recycle/misc/kansen-manual.pdf

この質問にご回答いただいたのは

矢野邦夫先生

浜松医療センター 副院長 兼 感染症科長

1981年名古屋大学医学部卒業、名古屋掖済会病院、名古屋第二赤十字病院、名古屋大学病院を経て米国フレッドハッチンソン癌研究所留学。帰国後、浜松医療センター。同院在籍中、ワシントン州立大学感染症科にてエイズ臨床短期留学、米国エイズトレーニングセンター臨床研修終了。2008年より同院副院長。医学博士、ICD、感染症専門医、血液専門医、内科認定医、藤田保健衛生大学客員教授、浜松医科大学臨床教授。

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