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ASP感染管理のQ&A | ASP Japan合同会社

水痘・帯状疱疹について

3ヶ月間入院していた患者に水疱を伴わない発疹が後頚部にでき、体幹に拡がったため皮膚科受診をしたところ、帯状疱疹と水痘症の併発と診断されました(皮膚の組織を検査した結果)。以下の3点について教えてください。

  1. 自己免疫が低下したことによる再発症で、水疱形成・咳を伴わない場合、空気感染するのか
  2. 麻疹と同様、年齢とともに抗体価は下がるのか
  3. アシクロビル(ビクロックス®)による治療が行われた場合、痂皮形成するまで感染力があるのか

ちなみに患者の水痘ヘルペスIgG(EIA) 127.4,IgM(抗体指数) 0.20 でした。

 

この患者は3カ月入院しており、一般社会から隔離されています。そのため、病院内で水痘や帯状疱疹患者に曝露していなければ、この患者が新しく水痘に罹患することはなく、帯状疱疹を発症した可能性が高いと考えます。免疫不全であれば播種性帯状疱疹となることがあり、一般的な帯状疱疹よりも広範に皮疹がみられます。「水痘・帯状ヘルペスIgG(EIA) 127.4,IgM(抗体指数) 0.20」という検査結果から、この患者に水痘の既往があることは明らかです。IgMが上昇していないことから、水痘ではなく、播種性帯状疱疹であった可能性が高いのではないでしょうか?但し、造血細胞移植後の患者のような細胞性免疫が極端に低下した患者においては水痘の既往があっても、水痘や帯状疱疹患者に曝露すれば水痘を発症することがあります(この場合は重症水痘になり、重篤な状況に進展する危険性があります)。また、造血細胞移植後数カ月後は帯状疱疹を発症しやすい時期でもあります。そのため、この時期に水痘・帯状疱疹の患者に曝露すれば、「もともと患者自身が持っていた水痘ウイルスによる帯状疱疹」と「新しく曝露した水痘ウイルスによる水痘」を同時に併発することはありえます。しかし、このような状況になる確率はかなり低いと思います。

いずれにしても、水痘・帯状疱疹と診断されたので、空気感染する可能性はあります(免疫が低下したことによる帯状疱疹であっても空気感染することがあります)。この患者は水疱形成・咳を伴わないので、水疱や咳のある患者よりは感染性は低いかもしれませんが、水疱が痂皮化するまでは感染性があると考えます。

殆どの人は水痘の既往もしくはワクチン接種によって水痘・帯状疱疹抗体を獲得していますが、一般人の約15〜30%が生涯に帯状疱疹を経験します1)。そして、この割合は平均余命が増加するに従って増加すると推測されています。これは抗体を持っていても帯状疱疹を発症するということを示します。水痘に罹患するのを防ぐためには水痘抗体を保持すればよいのですが、帯状疱疹の発症を防ぐためには抗体のみではなく、細胞性免疫も必要なのです2)

加齢とともに水痘・帯状疱疹の抗体価はある程度低下しますが、水痘を発症するほどの低下はありません。しかし、細胞性免疫は加齢によって確実に低下するので、帯状疱疹には罹患してしまうのです。

感染性保持期間については、例えアシクロビル(ビクロックス®)による治療が行われたとしても痂皮形成するまで感染力があると考えるべきと思います。

参考文献
  1. CDC. Prevention of Varicella.
    http://www.cdc.gov/mmwr/PDF/rr/rr5604.pdf
  2. CDC. Prevention of herpes zoster.
    http://www.cdc.gov/mmwr/pdf/rr/rr57e0515.pdf

この質問に回答いただいたのは・・・

矢野邦夫先生

浜松医療センター 副院長 兼 感染症科長

1981年名古屋大学医学部卒業、名古屋掖済会病院、名古屋第二赤十字病院、名古屋大学病院を経て米国フレッドハッチンソン癌研究所留学。帰国後、浜松医療センター。同院在籍中、ワシントン州立大学感染症科にてエイズ臨床短期留学、米国エイズトレーニングセンター臨床研修終了。2008年より同院副院長。医学博士、ICD、感染症専門医、血液専門医、内科認定医、藤田保健衛生大学客員教授、浜松医科大学臨床教授。

聖路加国際病院 医療安全管理室 インフェクション・コントロール・プラクティショナー 坂本史衣先生