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感染管理Q&A

輸液ルートの交換頻度について

Q 側管からの輸液ルートの交換頻度についてお尋ねします。一時点滴(抗菌薬など)の場合、その都度新しい輸液セットを使用するのが常識的ですが、当院では4日間同じ輸液セットを使用することになっています。ハブの操作回数を減らすことでCR-BSIのリスクが減少できると考えての対策とのことです。しかしながら、輸液終了後も側管から何本も輸液セットがつながっている状態は、患者のアメニティから考えても異様な状況で、ルートを引っ掛けて輸液セットが外れることもあります。ガイドラインなどでは側管からの輸液セットの交換に関するエビデンスはないと思いますが、感染管理上(医療安全上)どのように考えれば良いのでしょうか?輸液セットのコストを抑えられるメリットがあるとは思いますが、いかがなものでしょうか?
A

輸液ルートの交換頻度については、2002年にCDCが公開した「血管内カテーテル由来感染予防ガイドライン」に記載されている「72時間間隔よりも頻繁にならないようにする」という勧告が有名ですよね。このガイドラインが公開された後の2005年に発表されたシステマティックレビューによれば、脂肪や血液製剤以外の薬剤の投与に使用した輸液ルートを、96時間間隔より頻繁に交換しても血流感染のリスクが減るという科学的根拠はないとのことです。さらに、CDCは現在改訂中の血管カテーテル由来感染予防ガイドライン(草案)において、前述のレビューを含む5つの研究結果をもとに、脂肪および血液製剤以外の薬液投与に使用した輸液セットは、96時間以上、7日以内の間隔で交換することをカテゴリー1Aのランクで推奨しようとしています。

しかし、ご指摘のとおり、この推奨事項が一時的な抗菌薬等の投与に使用した輸液ルートにも当てはまるかどうかは不明です。例えば持続点滴用の輸液ルートのハブ(コネクター)に、抗菌薬用の輸液ルート(側管)を接続して、抗菌薬を1日3回投与したとします。その場合、抗菌薬投与が終了した時点で側管のクレンメや三方活栓を閉めるので、抗菌薬の残液が側管内に約8時間たまった状態でメインルートに接続されたままになります。そして、この残液は次回抗菌薬を投与する際に、血管内に流入することになります。

一般的に点滴静脈注射薬剤は、微生物汚染を防ぐために、調製後は長時間室温に放置することなく、速やかに使用することが望ましいとされています。電解質輸液、高カロリー輸液、アミノ酸輸液、脂肪乳剤にS.marcescens E.coliを混入させた実験では、6時間までこれらの細菌の増殖が認められなかったことから、調製後は6時間以内に投与することが望ましいとする文献もあります。

側管の輸液ルート内に残った薬剤の微生物汚染について、どの程度心配すべきか明らかなデータはありません。このように科学的根拠が乏しい感染予防上の疑問点は臨床現場には多数ありますね。悩むところですが、このような疑問点については、最近の研究結果に基づいた理論的根拠、コスト、作業効率、医療安全などの観点から総合的に判断して、病院独自の基準を設ける必要があります。ちなみに当院では、残液中の微生物汚染の可能性はゼロではないと考え、側管は投与終了後にハブから取り外して廃棄しています。また、側管を接続する場合は、未滅菌手袋を着用し、個包装のアルコール綿でハブを消毒してから接続することにより、接続時の微生物汚染を防ぐようにしています。

参考文献
  1. Gillies D, O'Riordan L, Wallen M, Morrison A, Rankin K and Nagy S. Optimal timing for intravenous administration set replacement. Cochrane Database Syst Rev 2005:CD003588
  2.  CDC. Dtaft Guidelines for the Prevention of Intravascular Catheter-Related Infections, www.cdc.gov/ncpdcid/pdf/Draft_BSI_guideline_v15_2FR.pdf
  3. 白石正.各種輸液への細菌混入時における細菌の増殖の相違.環境感染.2004;19,182

この質問にご回答いただいたのは

坂本 史衣先生

学校法人 聖路加国際大学 聖路加国際病院 QIセンター

1991年聖路加看護大学卒業、聖路加国際病院公衆衛生看護部を経て、1997年米国コロンビア大学公衆衛生大学院卒業。聖路加国際病院看護部勤務の後、日本看護協会看護研修学校 感染管理認定看護師教育課程専任教員。2002年より現職。米国感染管理疫学資格認定機構 (CBIC)による感染制御認定資格(CIC)取得。日本環境感染学会理事、日本医療機能評価機構患者安全推進協議会感染管理部会副部会長。

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