感染管理情報
病室の環境表面の清掃について
- Q 療養型100床の病院です。以前はMRSAが検出された患者様を同室にして、その他の患者様と部屋を分けていました。またMRSA患者様のおむつ交換は最後に回るようにしています。現在はMRSAについて隔離はしていません。環境整備はどのようにするのが望ましいですしょうか?現在、ベンザルコニウム塩化物使用しています。洗浄剤、消毒液の使い分けがよくわかりません。
- A
病室の環境は次の2種類に大別されます。
- 人がほとんど手で触れることがない環境表面
- 床などの水平表面と壁などの垂直表面が含まれます
- 人が手で頻繁に触れる環境表面
- 高頻度接触環境表面(High-touch surfaces, HTS)と呼びます
- 例としてベッド柵、手すり、ナースコールやモニター類のスイッチ等が挙げられますが、具体的にどの環境表面をHTSに指定するかは各病院で決定します
人がほとんど手で触れることがない環境表面は感染源になりにくいため、定期的な日常清掃によって汚れやほこりを除去すれば十分と考えられています。一方で、HTSは間接接触によって感染源となり得るため、日常清掃よりも頻繁かつ丁寧な清掃が求められます。
HTSの清掃には、日常清掃に使用する洗剤または低水準消毒剤を使用することが推奨されています。ただし、低水準消毒剤を使用する場合でも、期待されているのは消毒剤の殺菌作用よりも、拭ったり擦ったりすることによって、環境表面に存在する微生物や汚れを除去する作用です。
MRSA等の多剤耐性菌をもつ患者の病室については、前述の1と2の清掃において、洗剤または低水準消毒剤を使用することが勧められますが、使用したモップなどは病室ごとに交換するのが望ましいでしょう。
- 人がほとんど手で触れることがない環境表面
参考文献
- CDC. Guidelines for Environmental Infection Control in Health-Care Facilities. http://www.cdc.gov/hicpac/pdf/guidelines/eic_in_HCF_03.pdf (2013年3月6日検索)
この質問にご回答いただいたのは

坂本史衣先生
学校法人 聖路加国際大学 聖路加国際病院 QIセンター
1991年聖路加看護大学卒業、聖路加国際病院公衆衛生看護部を経て、1997年米国コロンビア大学公衆衛生大学院卒業。聖路加国際病院看護部勤務の後、日本看護協会看護研修学校 感染管理認定看護師教育課程専任教員。2002年より現職。米国感染管理疫学資格認定機構 (CBIC)による感染制御認定資格(CIC)取得。日本環境感染学会理事、日本医療機能評価機構患者安全推進協議会感染管理部会副部会長。