感染管理情報

感染管理Q&A

感染性廃棄物の取扱いについて

Q MRSAなど接触感染予防策で個室管理をしている患者の廃棄物について質問です。当院では点滴など針(点滴側に刺す部分)のついた物は患者が触る危険があるということで終了したものはビニール袋に入れ処置室へ持っていき廃棄していました。しかし、感染のリスクを考慮すると、個室のごみ箱に廃棄したほうが良いのではという意見もあり判断に困っています。ご意見を頂ければと思います。
A

多剤耐性菌など、接触予防策の対象となる微生物(以下、微生物)の伝播経路は、その微生物で汚染された手や器材との接触です。これをもとに考えるなら、廃棄物容器の中の感染性廃棄物(以下、廃棄物)から、微生物が空気中に漂い出て、他患者に伝播することはほぼあり得ないでしょう。廃棄物を介した微生物の伝播は、むしろ医療従事者が廃棄物を取扱った後に手指衛生を行わずに他患者や高頻度接触面(人の手が頻繁に触れる環境面)に触れた場合や、稀でしょうが、患者が廃棄物容器の中に手を入れるなどして他患者から出た廃棄物に触れた場合に起こり得ます。

以上から、廃棄物を介した感染予防のためには、廃棄物容器の設置場所(Where)以上に、廃棄物や廃棄物容器をどのように取り扱うか(How)に重点を置く必要があるというのが私の考えです。

米国疾病対策センター(CDC)の隔離予防策ガイドライン1)には、接触予防策対象患者に使用した医療用具の取り扱いは標準予防策に準じると書かれています。具体的運用はご自身の施設の状況に合わせて取り決めて頂く必要がありますが、その際の主な留意点は次のようになるかと思います。


  1. 廃棄物は手袋をつけて取り扱う。
  2. 廃棄物は、付着した血液や分泌物で周囲が汚染されないように、専用容器に捨てる。そのため、容器は作業場所付近にあるのが望ましい。作業場所付近に無い場合は、ビニール袋など防水性のある入れ物に密閉して容器のある場所に搬送する。
  3. 廃棄物を取り扱った手袋で、環境面に触れない。手袋は、廃棄物を捨てた直後に取り外し、速やかに手指衛生を行う。
  4. 廃棄物容器を病室内に置く場合は、患者や面会者がティッシュなどを捨てる一般廃棄物用容器と間違えて利用したり、手を入れることがないよう説明を行う。自分で動ける患者や面会者の理解力が乏しい場合は、設置しないか、鍵つき容器を使うなどの配慮が必要だと思われる。
参考文献
  1. CDC: 2007 Guideline for Isolation Precautions: Preventing Transmission of Infectious Agents in Healthcare Settings
    http://www.cdc.gov/hicpac/2007IP/2007isolationPrecautions.html

この質問にご回答いただいたのは

坂本史衣先生

学校法人 聖路加国際大学 聖路加国際病院 QIセンター

1991年聖路加看護大学卒業、聖路加国際病院公衆衛生看護部を経て、1997年米国コロンビア大学公衆衛生大学院卒業。聖路加国際病院看護部勤務の後、日本看護協会看護研修学校 感染管理認定看護師教育課程専任教員。2002年より現職。米国感染管理疫学資格認定機構 (CBIC)による感染制御認定資格(CIC)取得。日本環境感染学会理事、日本医療機能評価機構患者安全推進協議会感染管理部会副部会長。

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