感染管理情報
産婦人科領域の面会制限について
- Q 産婦人科領域における面会制限についての質問です。
新型インフルエンザの流行を機に、産婦人科病棟は小児(15歳以下)の面会制限を行いました。今回、インフルエンザ対策を解除したものの、小児の面会を許可するか感染管理室でも検討しておりますが、答えを出し切れない状況です。小児は、流行性ウイルス感染症などの発症リスクも高く、妊産婦に暴露することで、病院内だけでなく、患者自身にも影響を与えるものと考えます。しかし、産婦人科の現場では両親だけでなく、兄弟も家族形成の第1歩として、面会をさせたい希望があります。
面会制限を行うべきかにつきまして、ご意見を頂きたいと思います。 - A
米国小児学会は、産科病棟、小児病棟、NICUなどに入院している患児を、その兄弟が訪問することを奨励しています。特にNICUでは入院が長期化する場合があるため、兄弟の面会が重要だとしています。但し、小児の面会については、以下の基本事項を盛り込み、かつ各医療機関の実情に合ったマニュアルを作成し、面会を奨励すると同時に、感染予防のリスクを最少に抑える必要があるとも言っています。
<兄弟の面会おける基本事項>
- 兄弟の面会は入院中の患児にとって有益である。
- 病棟に入る前に、訓練を受けた医療従事者が、面会を希望する小児(以下、面会児)一人一人の健康状態について保護者に尋ねる。面会児の健康状態と面会を許可した事実について、診療記録に記載する。
- 面会児に、発熱や急性期疾患(上気道感染症、胃腸炎、皮膚炎を含む)の症状がある場合は、面会を許可しない。
- 面会児が、感染症を発症した人と最近接触し、予防接種を受けていない等の理由でその感染症を発症する恐れがある場合、面会は許可しない。
- 水痘患者に最近接触したが、現在無症状の面会児については、水痘の予防接種歴があれば水痘への免疫があると判断してよい。
- 面会児が、面会の時点で受けておく必要がある予防接種を受けているか確認する。インフルエンザ流行期には、インフルエンザ予防接種を受けていることを確認する。
- 面会児は、その兄弟のみと面会し、遊戯室などで他の患児と接触しないようにする。
- 面会児は、患児との接触前に推奨される方法で手洗いを行う。
- 面会児が他の患者と接触したり、指定された場所以外に行かないよう、面会中は保護者が面会児を監督する。
参考文献
- American Academy of Pediatrics. Red Book 2009 Report of the Committee on Infectious Diseases 28th edition.
この質問にご回答いただいたのは
坂本史衣先生
学校法人 聖路加国際大学 聖路加国際病院 QIセンター
1991年聖路加看護大学卒業、聖路加国際病院公衆衛生看護部を経て、1997年米国コロンビア大学公衆衛生大学院卒業。聖路加国際病院看護部勤務の後、日本看護協会看護研修学校 感染管理認定看護師教育課程専任教員。2002年より現職。米国感染管理疫学資格認定機構 (CBIC)による感染制御認定資格(CIC)取得。日本環境感染学会理事、日本医療機能評価機構患者安全推進協議会感染管理部会副部会長。