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内視鏡 その2 あらゆる場面で活躍する内視鏡 |学習ブログ|ASP Japan合同会社

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内視鏡はペットにも使われる

前回は、口や鼻から胃を通って小腸や大腸に至るまでには数多くの微生物が存在しており、内視鏡に付着した微生物を消毒することの重要さをお話しました。

これらは私たち人間を対象としたお話でした。犬や猫のペットでも内視鏡検査は行われています*1。あなたの大切な家族である犬や猫が動物病院で内視鏡検査を受けるときもあるかもしれません。そんなときに慌てないためにお話しておきましょう。

そして、内視鏡は活躍の場を広げています。人とはちょっと違った世界を覗けるかもしれませんよ。

変なものを飲み込んだら

人では胃潰瘍、胃癌、大腸癌などの検査のために内視鏡がよく使われています。

犬や猫でも同様の疾患に使われることはありますが、異物 の誤飲を確認し除去するために使われることが多いのです。飼い主が知らない間に、犬や猫は紐・ガム・プラスチック片・靴下などを飲み込んでいます。

動物の胃内視鏡検査では人の場合と異なり全身麻酔の必要があります。もちろん、動物専用の内視鏡も開発されています。ただ、犬や猫の食道から胃に至るまでの構造は人と比較し似ていますので、検査の方法に大差はありません。しかし、人とは違う胃の構造をした動物もいます。

そんな動物たちをどのように検査するのかをみていきましょう。

内視鏡検査のためのトレーニング

イルカでも胃内視鏡検査が行われます。人では口から胃までの距離は最長50㎝なので、その倍の長さの内視鏡を使います。

イルカは胃まで約150㎝もあるので、3mくらいの内視鏡が必要になります。当たり前ですが人の胃は1つですが、イルカには3つの胃があり、これを複胃といいます。獣医師は3つの構造が違う胃をみていかなければなりません。

イルカに胃内視鏡検査をするときには麻酔などかけるのでしょうか? 幸いなことにイルカは魚を丸飲みするので、胃内視鏡検査を無麻酔で行うことが可能です。

しかし、検査をする前にはある程度のトレーニングが必要となりますので、すぐにできるわけではありません。

内視鏡2-2-1

ちょっと違う内視鏡もある


これまでの話でどのような内視鏡をイメージしていましたか?

黒く長いゴムのようなグニャグニャしたフレキシブルな内視鏡でしょうか。体の奥深くに入り込む必要が無い場合には、硬く壊れにくい内視鏡も存在します。ハイ、嚙まれても大丈夫なくらいの硬いヤツです。

乳牛の4つ目の胃に異変が起こることが多く、体表から穴をあけて内視鏡で見ながら治療します(第四胃変位整復手術といいます)。

また、人工授精に使われたり、胎児の位置を観察したり、膣・子宮・尿道・直腸の検査に使われます。

内視鏡検査は非破壊検査

そのほか、ペンギン 、ゾウ、ジャガーなどの動物園にいる動物でも内視鏡検査は行われています。

人でも動物でも内視鏡はできるだけ開腹することなく検査や治療を行うために使われます。口や鼻から胃腸に至るまでは食物など体の外から取り込まれた物質と直に接するのでアプローチしやすいからです。

一方、工業的 に使われる内視鏡は内部を観察するために使われます。たとえば、コンクリートにダメージを与えないで内部を検査する構造物検査用内視鏡があります。これまでは比較的大きな穴を空けて検査するために、コンクリート内部の鉄筋を切断することがありました。

しかし、構造物検査用内視鏡では小さい穴を空けるだけで十分に観察できるのです。これを微破壊検査といいます。

人や動物用の内視鏡とはやや違う使い方をしますが、両者に共通しているのはできるだけ「非破壊」で観察し処置するということです。

 

内視鏡2-3

 

内視鏡検査のその先に

2回にわたり内視鏡のお話をしてきました。外から見えないところを観察するという技術はこれからも発展すると考えられます。

筆者の所属する大学では「コヒーレントラマン顕微鏡*2」という最新機器を使い、非破壊で細胞内の様子を観察する研究が進んでいます。内視鏡で胃や腸の表面の様子を観察し、その先端に付いたコヒーレントラマン顕微鏡が細胞内を探るという検査が将来可能になるかもしれません。

そのときにも忘れてはいけないのは、しっかりと消毒して安心安全に使うことです。

 

*1:https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1212/spe1_02.html
*2:Coherent anti-stokes Raman scattering microscopy: a biological review, Cytometry A. 2006 Aug 1;69(8):779-91.

2022年3月(令和4年)

水谷哲也
東京農工大学農学部附属 感染症未来疫学研究センター 
センター長・教授 獣医師・博士(獣医学)

 

 

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