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誰がために健診はある?

こんにちは、しらはた胃腸肛門クリニックの白畑です。

「別に長生きしたいわけじゃないし」に意義あり!ということで、今回は「健康診断」について考えてみたいと思います。

 

日本のがん検診受診率は低い?

国立がん研究センターによれば、2020年にがん検診・健康診断などにより、がんが発見された人はがん患者のうち13.9%でした*1。がんの早期発見に検診が果たしている役割が決して小さいわけではないことがわかります。

しかしながら、日本においてがん検診を受ける人数は国際的には低い数値にとどまっています。他国の数値を見ても、アメリカ(80.8%)、イギリス(75.3%)、おとなり韓国(67.6%)など、日本(41.0%)よりもがん検診の受診率の高さが目につきます*2

アメリカのような個人主義の国でこの数値は驚きです。また、同じような健康診断制度を持っているイギリス、韓国、日本との違いはどこにあるのでしょうか?

これらの国々では、「国として検診の対象がきちんと明確化され、受診勧奨を行う体制が整っているため、高い受診率が保たれている」と言えば聞こえはいいですが、実際には重症化する国民を軽減することが国庫に利益があることを理解した上での施策ではないかと勘繰っています。

内視鏡検査を受けている男性の周りに各国の紙幣が飛んでいる様子

 

あなたの体は、自分だけのものではない

高額療養費制度のおかげで、患者さんたちは医療費の心配をせずに治療に専念することができるわけですが、その差額分は国の財源で賄われていることはご存じの通りです。国の医療費はほぼほぼ右肩上がりに増加しており、令和2年度では42兆9,665億円と巨額なものとなっています。

対GDPの比率を鑑みると、由々しき事態と言わざるを得ないでしょう*3。

身近に「自分の体なのだから、どうしようと勝手じゃないか」という方やさらには「そこまで(節制)して、長生きしたくない」と大見得を切られる御仁がおられないでしょうか?

ところがどっこい、そういった方に限って大往生することも少なくないのでは?(笑)

高齢者の病が重症化して治療を受けるとなると、国庫への負担は相当なものになります。

こうしたハードボイルドな発言をする方々には「大病すれば国に迷惑がかかるから、生きている限りは検査してください」とやんわりと諭してもいいのではないでしょうか。

 

年々、右肩上がりの国民医療費と対国内総生産比率のグラフ

※出典:「令和2(2020)年度 国民医療費の概況」(厚生労働省)」

それでも懲りない面々には

自治体によって違いがあるかもしれませんが、例えば私のクリニックのある横浜市では70歳以上の方は上部内視鏡検査が無料で受けられます。

今後もこうした動きは全国的に加速化してくると思われますが、無料であっても検査に来ない人は来ません。

将来的には「検診休暇」「検診週間」のような制度が登場しかねませんが、しっかりした記録提示を求めることなしには、「単なる休み」に変えてしまう方々が一定数出てくることは想像に難くないことです。

「いざというとき」に検査忌避が続いた人には、一部自己負担を強いるなど、少々ラディカルなことをしないと、国民皆保険制度に慣らされた日本では本当の「重症化予防」につながらないのではないかと考えてしまいます。

ここまですれば検診に無関心だった人も検診を自分事として考えられるのではないでしょうか。

カレンダーを指さす高齢者

 

「自分のため」から「みんなのため」に

検診は、労働人口を維持するためにも、重症化を防いで医療費を抑える意味でも、「国家の野望」と言えるものです。労働安全衛生法や健康増進法など人々の健康を守る法が整備されつつありますが、検診についてはあくまでも「任意」で行われているのが実状です。

医師の立場としては、検診による病気の早期発見は普遍的な願いであり、正直なところ目の前の患者さんを救いたい気持ちが最優先事項です。ただ、このまま右肩上がりの医療費の増加を放置すれば、日本の未来に悪影響があることは間違いないでしょう。

検診で自分の健康を守ることは、家族を守るのみならず、この国を救うことにつながるということ。「国の思惑」を超えて、個人個人が公共性の一環として身につけるべき常識に変えていきたいものです。

 

*1:公益財団法人生命保険文化センター「がん検診などでがんが分かった人の割合はどれくらい?」

*2:大阪国際がんセンター「がん検診の受診率向上に向けて!」

*3:厚生労働省「令和2(2020)年度 国民医療費の概況」

 

2023年6月(令和5年)

白畑 敦(しらはたあつし)

消化器外科医。しらはた胃腸肛門クリニック横浜院長。山形県出身。

昭和大学医学部卒業後、大学病院や総合病院などで勤務したのち、現職。

日本外科学会、日本消化器外科学会、日本消化器内視鏡学会ほか専門医。趣味はワイン、柔道四段。

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