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過酸化水素と魚たちとの深~い関係 〜生物が分解できるからこそ活躍できる物質〜|学習ブログ|ASP Japan合同会社

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コロナ禍で熱帯魚ブーム到来?

コロナ禍の巣ごもり需要として犬や猫などのペットを飼う人が増えたそうです。私の周りでは熱帯魚を飼い始めた人がたくさんいました。ネット検索してみると、確かにアクアリウムに癒しを求める人が増えているようで、「輸出入の制限によって熱帯魚の輸入が滞っている」とか「レンタル水槽の需要の伸び」などの記事が見つかりました。

さて、飼育する熱帯魚には、手軽に始められる淡水魚と、難易度の高い海水魚がいます。また、水草を景観としてアクアリウムを楽しむ方もいて、この場合、熱帯魚は脇役ということになりましょうか。

ちなみに、私は小型ナマズのコリドラスが一番好きです。水底をちょこまかと動いて掃除もしてくれて、中でも目がパンダの模様に似ている”コリドラス・パンダ”は最高にかわいいです。このようにかわいい熱帯魚たちですが、ときには病気に罹ることもあり、悲しい思いをすることもあります。
 
これまでのメルマガでは過酸化水素が幅広い分野で使われていることをご紹介してきましたが、今回はこの過酸化水素が魚の病気を救うかもしれないというお話から始まります。

白点病には過酸化水素

海水魚に最も多い病気は白点病といわれています。

白点病は文字通り魚の体表に白い点が多数できる病気です。これには海水魚だけではなく淡水魚もかかります。

原因は繊毛虫なのですが、海水魚と淡水魚では繊毛虫の種類が異なります。繊毛虫が体表上皮で体液を摂取しながら繊毛運動をするので、魚は痒がって、水草や石などに体をこすりつけます。

また、エラに寄生すると呼吸困難になる場合があります。従来の白点病の治療にはメチレンブルーやマラカイトグリーン、硫酸銅、紫外線などが用いられてきましたが、最近では過酸化水素に注目が集まっています。過酸化水素には劇的な治療効果はないのですが、水槽内の生物に影響を及ぼしにくいのが利点だといえます。

なぜなら、酸素を使って呼吸をする生物はカタラーゼを持っているので、過酸化水素を分解できるからです。

寄生虫のライフサイクル

過酸化水素で食品を漂白する?

過酸化水素は魚の治療に用いられているだけではありません。口にしたことがある方も多い、ある魚介類の食材にも使われています。
 
それは数の子です。数の子は過酸化水素で漂白されています。漂白処理をしていない数の子は血合いなどにより、見た目がおいしそうではありません。しかし、お正月のおせち料理の数の子は綺麗な黄色をしていますよね。
 
過酸化水素で処理すると色目が綺麗になり、処理の際に発生する泡が夾雑物を除去してくれるので、お正月にふさわしい食材に仕上がるのです。出荷時には過酸化水素を除去しなければならないので、カタラーゼを使って過酸化水素を分解しなければならず、手間がかかっていることも高額な食材になっている理由かもしれません。
 
このように過酸化水素が漂白等の目的で使用されるとき、「食品、添加物等の規格基準」では、釜揚げシラスやシラス干しでは1kgあたり0.005g以上の過酸化水素が残存していてはいけない、またその他の食品では完全に分解、除去されていなければならないとされています*1。
 

魚たちの周りに存在している過酸化水素

カタラーゼによる過酸化水素分解
 
過酸化水素は海にも存在しています。しかし、数ナノモルから400ナノモルくらいなので、非常に低い濃度です。これくらいの濃度では白点病などを治療することはできません。
 
しかし、海中の溶存有機物が光分解されるときに過酸化水素が発生するので、溶存有機物の多い沿岸地域や日射量の多い赤道付近のようなところで高濃度になると考えられています。そのほか、過酸化水素は植物プランクトンからも放出されますが、微生物や植物プランクトンが生成するカタラーゼによって分解されます。
 
魚が棲息しているところには過酸化水素も存在していますが、魚とそれを取り巻く様々な生物が協力して過酸化水素を分解して、ちょうど良い濃度に調整しているのかもしれませんね*3。


*1: 厚生労働省「食品別の規格基準について」
*2:魚醤と醤油の抗過酸化水素活性, 日本醸造協会誌, 2011;106(1) :19-27.
*3:経済産業省「優先評価化学物質のリスク評価(一次), 生態影響に係る評価Ⅱ, 過酸化水素水」

2022年6月(令和4年)

水谷哲也
東京農工大学農学部附属 感染症未来疫学研究センター
センター長・教授 獣医師・博士(獣医学)
 

 

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