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「腸活」には答えがない|学習ブログ|ASP Japan合同会社

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流行りの「腸活」

近年、腸内に存在する何億何兆もの微生物についての研究から、善玉菌や悪玉菌、日和見菌で構成された腸内環境は「第二の脳」といわれるほど、私たちの健康に与える影響が明らかになってきました。

この腸内環境は、様々な疾患や健康問題と関連しており、特に炎症性腸疾患や便秘に関する医学ガイドラインでその重要性が強調されています。

これらは今後のトピックとしても非常に興味深いものです。

良い腸内環境とされている図

将来的には、個々の健康状態やおなかの調子に合わせて、腸内細菌をオーダーメイドにカスタマイズする可能性もあるかもしれません。

つまり、自分の腸内環境を最適化し、健康を改善するために、特定の細菌を培養するのです。

昨今、巷では「腸内環境を整える活動」=「腸活」と目にすることが増えました。

しかし、現時点では腸活に関する明確な答えや、理想的な腸内環境の確定的な情報はまだありません。

腸内細菌の多様性やそのバランスを促進する具体的な方法は、日々進化しており、新たな知見が続々と発表されているので、最新のアドバイスに注意を払うことが大切です。 

 

腸活あれこれ

特に病気の患者さんの腸内環境を整えるために、健康な人の便から採取した細菌を培養し、患者さんへ腸内環境を移すという、いわゆる「便移植」に関する研究が行われているのは確かです。

ただ、便移植がどれだけ有益であるかについては、まだ明確な証拠が不足しています。

他の人の腸内細菌を個人の腸内に移植するリスクや倫理的な側面も考慮しなければなりません。 
 
ビフィズス菌や乳酸菌などのプロバイオティクスも、腸内環境を改善する手段の一つとして、すでに広く注目されています。

プロバイオティクスを含む食品を摂取し、腸内に有益な細菌を供給することで、健康に寄与する可能性があるとされるものです。

ただし、全てのプロバイオティクスが同じように効果的であるわけではなく、個人差があることや、適切な種類と量を選ぶ重要性も考慮しなければなりません。

長期的な効果に関しても研究が進行中であり、明確な結論が出ていない点も注意が必要です。
ビフィズス菌や乳酸菌などのプロバイオティクス食品

腸内洗浄や整腸サプリメントに関する科学的なエビデンスは限られており、多くの場合、その効果や安全性について明確な結論が得られていません。

ここでも医学的ガイドラインに基づく治療法が優先されるべきです。

私のクリニックでは、大腸カメラのためだけでなく、便秘が気になる患者さんへ、年に2回など回数に注意しながらの腸内洗浄をおすすめして、必要と思われる方には、医学的ガイドラインに沿った下剤を処方しています。

ガイドラインが記載されている本を左手に持った男性医師

エビデンスに沿った治療を

腸内の状態は個人によって異なり、便秘が気になる患者さんでも、特定の治療法が必要かどうかは症状や健康状態に依存します。

科学的根拠に基づいたアプローチと、医療専門家の指導を受けながら、慎重に進めることが最良の治療方法なのです。

巷に出回っている際立つ効果を謳ったサプリメントや、腸に器具を差し入れて腸内洗浄を行う治療法が、どこまでエビデンスに沿ったものであるかわかりません。

こうした方法を軽はずみに信奉するのはどうかと思います。 



2023年10月(令和5年)
白畑 敦(しらはたあつし)
消化器外科医。しらはた胃腸肛門クリニック横浜院長。山形県出身。
昭和大学医学部卒業後、大学病院や総合病院などで勤務したのち、現職。
日本外科学会、日本消化器外科学会、日本消化器内視鏡学会ほか専門医。趣味はワイン、柔道四段。

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