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医療現場を革新する新しい消毒のデザイン|学習ブログ|ASP Japan合同会社

変化する医療現場の消毒デザイン
はじめまして、看護師ジャーナリストの坪田康佑と申します。
私はこれまでに、無医地区で診療所や訪問看護ステーションの開業などを行ってきました。
現在は、新聞や雑誌の連載を執筆したり、医療看護系スタートアップの支援をしたりしています。
ここでは、私が常日頃考えていることや、これまでの経験を踏まえた話題をお伝えします。お気軽にお付き合いください。
私は看護師として、患者さんの安全と健康を守るために日々努力しています。その中で消毒プロセスはそのために不可欠な要素です。
最近では、より効果的で安全な方法へと消毒の開発が進んでいますが、そうした医療現場における新しい消毒のデザインをいくつかご紹介しましょう。
肌に優しい消毒剤
日々の手指の消毒は避けて通れないルーティンの一つです。
しかし、この必須の手順が手荒れの原因になっていることは、看護師にとって大きな問題です。そのため、患者さんへのケアに影響のないハンドクリームや、手の皮膚を守りながら効果的な消毒を実現する消毒剤が選ばれています。
最新のアルコールベースの消毒剤には、手荒れ対策として保湿成分が配合されています。特に、アロエベラやグリセリン、ビタミンEが含まれた消毒剤は、手荒れを軽減するものとして注目されています。他にも、pHや添加物なども考慮したいポイントです。
こうした消毒剤のデザインは、看護師の日々の業務をより快適にし、手荒れのリスクを軽減させながら、皮膚が弱い患者さんや高齢者にも優しく、医療現場の安全確保だけでなく、清潔なよりよい環境づくりに役立ちます。
消毒ディスペンサーの安全性に対する配慮
消毒ディスペンサーのデザインにおいては、全ての使用者の安全が考えられていますが、今ではその安全性への考慮から、手をかざすとセンサーが感知して消毒液がシュッと噴射する非接触式のものが増えてきました。
特に、子供の目の高さにある消毒ポンプからアルコール消毒液が目に入る事故は避けなければなりません。
私たちは消毒ディスペンサーの設置場所や高さを慎重に選び、非接触式や噴射口の位置を変えたディスペンサーに変更することで、このような事故を予防してきました。
さらに、患者さんやその家族への指導を通じて、安全な消毒方法の普及にも努めています。
最新技術と消毒
看護師の日々の業務には、患者ケアから環境整備まで、多種多様なタスクが含まれます。最先端の技術を利用することで、消毒の現場でも作業内容は刻々と変わってきています。
ここでまず注目したいのが、UV-C光を用いた消毒ロボットのデザインです。このロボットは、病室や手術室を自立的に巡回し、床面や壁、医療機器などをUV-C光で照射し、ウイルスや細菌を不活化します。
ロボットはプログラムに従って自動運転するため、看護師が手動で消毒作業を行う時間と労力を大幅に削減できます。
また手術用のダヴィンチロボットの普及も消毒プロセスに変化をもたらしています。
このロボットは精密な器械であり、大きなロボット自体とそのコンポーネントの適切な消毒のために、手術室の消毒には新しいプロセスが追加されました。
コスト効率を考慮した消毒方法の選択
新しい消毒方法を導入する際には、そのコスト効率も重要な考慮事項です。
限られた予算内で最大の効果を得るために、効率的かつ経済的な消毒ソリューションをデザインする必要があります。
例えば、ここまで見てきたような多目的で効率的な消毒剤や消毒ディスペンサーの検討、消毒して再利用できる器具や最新式の消毒機材の導入、スタッフへの適切な消毒方法トレーニングなどを組み合わせることにより、資源を有効活用しながら、患者さんや医療スタッフ全体の安全を確保することができます。
こうした消毒をデザインするという見地からも、医療現場の革新は日々行われています。
2024年4月(令和6年)
坪田 康佑(つぼた こうすけ)
看護師、看護・介護ジャーナリスト。
ETIC社会起業塾を経て、無医地区への医療提供体制づくりに取り組む。2019年に診療所や訪問看護ステーションなど全事業承継。現在は訪問看護師向け雑誌などでの連載や高齢者向け新規事業開発に取り組む。開発に関わった三角巾はグッドデザイン賞を受賞する。