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おなかと地球を旅するウイルス 〜下部内視鏡検査を受けて想うこと〜 |学習ブログ|ASP Japan合同会社

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私は2年に1度のペースで大腸内視鏡検査を受けています。そして、ときには小さくないポリープが見つかることもあり、そのときは2泊3日の入院になります。この10年くらい休日も何らかの仕事が入る毎日を過ごしていますので、入院中は趣味の折り紙を折りながら充実した時間を過ごしています。

 

腸内細菌はすごい

大腸内視鏡検査の前日、私の腸の中には大量の腸内細菌が住んでいました。人間は口腔内、鼻腔内、皮膚などにも細菌を飼っていますが、その9割が腸に存在しているといわれています。

腸内細菌の総数は個人差があるのですが100兆から1000兆個もあり、その種類はなんと1000種にのぼります。私たちの体は約37兆個の細胞で構成されていると言われています*1ので、それよりもはるかに多い細菌とともに生活していることになります。

こうなると、私の本体は私なのか細菌なのかわからなくなってしまうくらいです。大腸内視鏡検査の当日には下剤を飲んでこれだけの腸内細菌を全部排出します。腸内細菌を全部集めると1キロから2キログラムです。

細胞に比べると細菌は小さくて軽いことがわかります。腸内細菌は多彩な機能を持ち、様々な臓器に影響を及ぼすことがわかってきました。腸は脳に次いで神経細胞の多いところなので、脳の指令とは関係なく自律的に蠕動運動を行っています。

腸の細胞と腸内細菌は最強のタッグを組んで食べ物を消化吸収してくれているのです。

 

環境を循環するウイルス

腸内細菌の研究でいろいろなことがわかってきました。是非ともインターネットサイトや書籍を読んで腸内細菌ワールドにひたってください。ここではあまり紹介されていないことを書いていきましょう。

腸内細菌をメタゲノム解析していると、植物のウイルスがしばしば検出されます。PMMoV(トウガラシ微斑ウイルス)はもっとも検出されるウイルスのひとつです。PMMoVはトウガラシ類に感染して葉などを枯らしてしまいます。

このウイルスはチリソースなどにも混入しているので、中華料理を食べるときに口の中に入ってきます。PMMoVは口から胃を通過して、小腸から大腸、直腸から便として排出されていきます。現在、私たちはPMMoVが腸の中で何をしているのかについて研究しています。

PMMoVは強いウイルスなので、トイレから下水へ流れていきますが分解されずに河川へ運ばれていきます。海へ流されたPMMoVは牡蠣で濃縮されます。牡蠣の中で増えることはありません。そして生牡蠣を食べた人は同じ循環を繰り返すのです。このようにPMMoVは環境中を循環しているのです。

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内視鏡の消毒

大腸内視鏡検査のときには、貴重な戦力ともいえる腸内細菌やPMMoVを全部掃き出してしまうので、私たちは無防備になります。そして、内視鏡による検査が始まります。このときに重要なのは内視鏡がしっかり消毒されていることです。

ポリープや大腸癌が見つかったときには切除しなければなりませんので、前の人に使ったときに付着した細菌などをしっかり除去(消毒)する必要がありますよね。内視鏡の消毒に使われるのが高水準消毒など信頼のおける消毒薬などです。

しっかり消毒された内視鏡で検査してもらえると、とても安心ですね。

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*1:An estimation of the number of cells in the human body(Ann Hum Biol. Nov-Dec 2013;40(6):463-71.)

 

水谷哲也
東京農工大学農学部附属 感染症未来疫学研究センター 
センター長・教授 獣医師・博士(獣医学)

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